人間の体の中でも特に重要なのが頭部ですが、その頭部の動きを司っているのが「頸部(首)」です。
頸部(けいぶ)には重い頭部を支えるしっかりした筋肉がいくつかついています。
体と頭を繋ぐ橋渡しのような部位でもありますし、デコルテ部分は顔の次に目立つ部分でもあります。
今回は頭部に続いて重要なポイントととなる「頸部(首)」の筋肉について、自作のイラストを使って解説します。
こんな方におすすめ
- 美術解剖学に興味がある方
- 人体の知識をイラスト制作やモデリングなどに活かしたい方
- 首の筋肉の構造について興味がある方
【美術解剖学】頸部(首)の筋肉をイラストで解説
頸部(首)の筋肉は人体のなかでも特に重い頭蓋骨を支えていて、胴体と頭蓋骨を繋ぐ役割を担っています。
人間の頭を動かす場合には首の筋肉を操作する必要がありますし、首の筋肉なしには好きな方向を見ることもできません。
また首の深層には声帯などの声を発するための器官があり、これも必要不可欠なものになっています。
頸部には複数の筋肉がありますが、大まかに浅層と深層の2つの項目に分けて考えるのがオススメ。
浅層と深層
頸部の筋肉は主に頭部全体を動かすために使われる表面にある筋肉(浅層筋)と、頚椎前部などの深い部分にある筋肉や軟骨(深層筋)があります。
頸部前面からみた筋肉
頸部を前面から見ると上記のようになっています。
▼簡単に筋肉の名称と機能・役割について以下にまとめました。
名称 | 機能・役割 |
胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん) | 首を曲げる、回転させる、伸ばす |
胸骨舌骨筋(きょうこつぜっこつきん) | 喉頭を下に引く |
僧帽筋(そうぼうきん) | 肩や肩甲骨を動かす |
肩甲挙筋(けんこうきょきん) | 肩甲骨を上に動かす |
斜角筋(しゃかくきん) | 首を前や横に動かす |
「胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)」
頸部において一番目立つ筋肉です。
首を曲げたり横に倒したりと様々な動作で使われる筋肉で、首のシルエットにも大きく作用している筋肉でもあります。
二股にわかれており、頭部から胸骨に着く部分と鎖骨に着く部分があるのが名前の由来です。
「胸骨舌骨筋(きょうこつぜっこつきん)」
舌骨から胸骨にかけて付いている筋肉で、舌骨を下方に引く作用をもつ筋肉です。
「僧帽筋(そうぼうきん)」
首の後ろから背中にかけてついている大きな筋肉です。
肩を上げたりすくめたり、肩甲骨付近を内転させたりする作用をもっています。
肩をすくめる際に盛り上がる首の後ろの筋肉として有名です。
「肩甲挙筋(けんこうきょきん)」
頸椎と肩甲骨をつなぐ筋肉です。
肩甲骨を上方に引く作用があります。
デスクワークをしている方が凝りがちな部分です。
「斜角筋(しゃかくきん)」
首の前面にある筋肉です。
首を前や横に動かす作用があります。
肋骨にも繋がっており、第一第二肋骨を引き上げる作用もあります。
頸部側面の筋肉
次は頸部を側面から見たイラストで少し細かく解説します。
最浅層の筋肉
頸部を側面から見ていきます。
頸部の一番外側には大きく薄い「広頸筋(こうけいきん)」という筋肉がついていて、首の前面の皮膚を大きく動かしたり口角を下げる作用があります。
この筋肉が一番浅層になります。
名称 | 機能・役割 |
広頚筋(こうけいきん) | 頸部の皮膚を上に引く、張る、口角を下げる |
浅層の筋肉
次は頸部浅層の筋肉です。
前部から見た状態のものを横から見た状態なのでより形状が理解しやすいかと思います。
名称 | 機能・役割 |
胸骨舌骨筋(きょうこつぜっこつきん) | 喉頭を下に引く |
肩甲舌骨筋(けんこうぜっこつきん) | 舌骨を下に引く |
胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん) | 首を曲げる、回転させる、伸ばす |
斜角筋群(しゃかくきんぐん) | 首を横に曲げたり前に倒す |
僧帽筋(そうぼうきん) | 肩や肩甲骨を動かす |
「肩甲舌骨筋(けんこうぜっこつきん)」
舌骨に着く筋肉で肩甲骨の上縁から起こっています。
舌骨を下に引いたり、頸部の筋膜を緊張させたりする作用があります。
「斜角筋群(しゃかくきんぐん)」
複数の斜角筋の集まりです。
首を前や横に屈曲させたりする作用があり、肋骨にも繋がっています。
次は側面の筋肉を更に細かく紹介していきます。
名称 | 機能・役割 |
茎突舌骨筋(けいとつぜっこつきん) | 舌骨を後方に動かす |
顎舌骨筋(がくぜっこつきん) | 舌骨を前方に動かす |
顎二腹筋(がくにふくきん) | 舌骨を前上方に動かす |
胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん) | 首を曲げる、回転させる、伸ばす |
胸骨舌骨筋(きょうこつぜっこつきん) | 舌骨を下方に引く |
頭板状筋(とうばんじょうきん) | 頭部を安定させる |
中斜角筋(ちゅうしゃかくきん) | 肋骨を上方に引く |
僧帽筋(そうぼうきん) | 肩や肩甲骨を動かす |
前斜角筋(ぜんしゃかくきん) | 肋骨を上方に引く |
肩甲舌骨筋(けんこうぜっこつきん) | 舌骨を後下方に引く |
「茎突舌骨筋(けいとつぜっこつきん)」
顎の骨の付け根にある筋肉です。
耳の下あたりから舌骨に渡ってついています。
舌骨をやや後方上部に動かす作用があります。
「顎舌骨筋(がくぜっこつきん)」
顎から舌骨に扇状に広がって付いている筋肉です。
口の中の底にもなっており、舌骨を前方に動かす作用を持っています。
「顎二腹筋(がくにふくきん)」
舌骨につながる細長い筋肉です。
舌骨を前上方に動かす作用を持っています。
中間腱を堺にして前部と後部に分かれており、後部は「顎二腹筋後腹(がくにふくきんこうふく)」といいます。
いずれも舌骨を前後に動かす筋肉として使われます。
「頭板状筋(とうばんじょうきん)」
頚椎から起こる首の後ろの筋肉です。
顔を上に上げる作用があり、頭部を斜め後ろに倒す際にも使われます。
「前斜角筋(ぜんしゃかくきん)」
頚椎の突起から第一肋骨に伸びる筋肉です。
肋骨を引き上げる作用を持っています。
「中斜角筋(ちゅうしゃかくきん)」
前斜角筋の上部にある筋肉です。
頚堆にある突起から肋骨に向かって伸びています。
肋骨を上方に引き上げる作用を持っています。
頸部深層
名称 | 機能・役割 |
甲状軟骨(こうじょうなんこつ) | 声帯に応じて上下に動く、喉仏の一部 |
輪状軟骨(りんじょうなんこつ) | 声帯に応じて動く |
気管軟骨(きかんなんこつ) | 気管を保護する |
僧帽筋(そうぼうきん) | 肩や肩甲骨を動かす |
胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん) | 首を曲げる、回転させる、伸ばす |
「甲状軟骨(こうじょうなんこつ)」
声帯を守るように覆う軟骨です。
凸状に出っ張っていて、この甲状軟骨が飛び出た部分を一般的に「喉仏」と呼んだりもします。
「輪状軟骨(りんじょうなんこつ)」
甲状軟骨の下部についている軟骨です。
指輪に似たような形状をしているためこのように呼ばれています。
これも声帯を守っている軟骨のひとつです。
「気管軟骨(きかんなんこつ)」
輪状軟骨の下部についている軟骨です。
頸部の動きに柔軟に対応しつつ潰れないように強度を確保する作用を持っています。
まとめ
今回は人間の頭部と体を繋ぐ橋渡し的役割を持つ「頸部の筋肉」について紹介しました。
わかりやすい部位ではない上にあまりイラスト制作などに直結するイメージが無い部位ではありますが、
首の描き方や作り方がおかしいと全体のバランスもおかしく見えてしまうので最低限は覚えておきたい部位です。
特に鎖骨につながる胸鎖乳突筋や背中につながる僧帽筋などは人体のシルエットに直結する筋肉なので、出来る限りどのような形をしているかを意識して覚えておくのがオススメです。
記事のまとめ
- 頸部の筋肉は頭部を動かす際に必要不可欠
- 頸部の筋肉は表面の浅層と内部の深層に分かれている
- 浅層の筋肉は主に頭部を動かす役割を担っている
- 浅層には軟骨などがあり、声帯を保護したりする役割を担っている
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