美術解剖学では体の各部の位置や方向を説明するためにあらかじめ軸を決めて、それを基準に位置や方向を説明することがよくあります。
人体は複雑な構造をしているので、決められたルールに従って方向や位置を決めることでそれぞれの部位や方向をわかりやすくしています。
逆に言えばこの決められたルールを知らないと、体のパーツの位置や方向の説明を見たとしてもわかりにくくなってしまいます。
そこで今回は解剖学における「人体の位置と方向を示すための用語」について、3Dモデルを使って簡単に紹介します。
解剖学の難しい教科書や説明に書いてある内容を理解するための助けになればと思います。
【解剖学】人体の位置と方向を示す解剖学用語を解説
美術解剖学ではいくつかの基準でそれぞれの体の位置や方向を指し示します。
ポイントになるのが体の軸です。
まず軸を決めてから、そこから相対的にどの方向にあるかを指し示す用語が決められています。
面について
解剖学では軸を決めるために体を面で分割し、それによって決めた基準にしたがって方向を指し示します。
主な軸としては以下の3つがあります。
- 正中面
- 正面
- 水平面
「正中面」は体を左右に分ける真ん中にある面です。
正中線に従って配置されていて、これを基準にして左右や体の外側(がいそく)内側(ないそく)を判断したりします。
正中面と平行な複数の面のことを矢状面(しじょうめん)とも言ったりします。
また「正面」は人体に横向きの面で、これによって前方や後方を示します。
冠状面(かんじょうめん)とも呼ばれます。
「水平面」は人体の中央部分(へそのあたり)を中心にした面で、横断面(おうだんめん)とも呼ばれています。
これによって上方と下方を示したりします。
基本的にはこれらの面によって決められた軸に従って、体のパーツの部位名称などが決められていたりします。
頭部の方向の呼び方
頭部を基準にした方向の呼び方です。
- 前に
- 後ろに
- 内側に
- 外側に
水平面を基準にして「前に(前方に)」「後ろに(後方に)」と呼び、
正中面と基準にして「外側に(がいそくに)」「内側に(ないそくに)」といったように指し示します。
前頭部や後頭部、側頭部といった呼び方もこれを基準にしています。
体幹の方向の呼び方
体幹(ここではそれぞれの面の交差する部分)の方向の名称です。
それぞれの面を基準にして以下のように指し示します。
- 後ろに
- 前に
- 上に
- 下に
- 内側に
- 外側に
- 近位に
- 遠位に
正面基準に「前に(前方)」「後ろに(後方)」と呼び、正中面を基準にして「内側に(ないそくに)」「外側に(がいそくに)」と呼ぶことが多いです。
水平面を基準に「上に(上方)」「下に(下方)」とも示します。
また、体幹に近い方向を「近位(きんい)」、遠い方を「遠位(えんい)」と呼んだりします。
骨格を示す場合に、端が体幹に近ければ「近位端(きんいたん)」遠ければ「遠位端(えんいたん)」といったりもします。
体肢の方向の呼び方
体肢(手と脚)の方向は以下のように呼びます。
- 手背に
- 手掌に
- 足背に
- 足底に
手の甲の方向のことを「手背(しゅはい)」、手のひらの方向のことを「手掌(しゅしょう)」と呼びます。
また足の甲の方向のことを「足背(そくはい)」、足の裏の方向のことを「足底(そくてい)」と呼びます。
視点の方向の呼び方
視点についても触れておきます。
それぞれの面を基準に、視点を紹介する場合に以下のように呼ぶことがあります。
- 背側(はいそく)=後ろから
- 腹側(ふくそく)=前から
- 外側(がいそく)=外側から
- 内側(ないそうく)=内側から
- 頭方(とうほう)=上から
- 尾方(びほう)=下から
横から見た図で説明すると正面を基準にして背中側から見た視点のことを「背側(背側)」と呼び、前方から見た視点のことを「腹側(ふくそく)」と呼んだりします。
また頭の上の方向を「頭方(とうほう)」と呼び、水平面から下の方向を「尾方(びほう)」または「尾側(びそく)」と呼ぶこともあります。
前方から見た場合に正中線(矢状面のある部分)から見た方向によって「外側」と「内側」と呼びます。
少しわかりにくいですが、中心から外に向かっているのが外側で内に向かっているのが内側といった感じです。
内側広筋や外側広筋といったように向いている方向によって名称が付けられたりします。
まとめ
今回は美術解剖学における位置と方向を指し示す専門用語について紹介しました。
この方向のルールによって筋肉の名前が付けられていたりするので、知っておくだけで筋肉の名前が覚えやすくなります。
解剖学を勉強しようと考えている方は参考にしてみてください。
▼参考
▼解剖学オススメ本