美術解剖学で筋肉について学ぶ際に知っておきたい前提知識として
「筋肉に起こるところ」と「筋肉の着くところ」というものがあります。
筋肉は骨に付着している組織ですが、骨に対しての筋肉の付き方がそれぞれ決まっています。
筋肉自体の形状を覚える前に筋肉がどの部位からどの部位に対して付着しているかについて知っておくことで、より筋肉と骨の形状と位置が覚えやすくなります。
今回は美術解剖学における筋肉の「起こるところ」と「着くところ」について、僕の制作したイラストを使って簡単に紹介します。
【美術解剖学】筋肉の「起こる所」と「着く所」【イラスト】
人間の体には600を超える筋肉が存在しますが、筋肉が骨に対してどのように付着しているかを表す単語に以下の2つがあります。
- 筋肉の起こるところ=起始点
- 筋肉の着くところ=停止点
筋肉は筋膜に包まれていて、その両端には腱があります。
簡単にいうとこの腱部分が骨の様々な部位に付着して関節の動きなどを助けています。
この筋肉が始まる部分のことを「起こるところ(起始点)」と呼び、筋肉が終わる部分のことを「着くところ(停止点)」と呼びます。
筋肉のスタート地点とゴール地点といったイメージです。
この「起こるところ」と「着くところ」はそれぞれ筋肉の数だけ存在します。
役割としては動く際に固定されている部分は起始点、付着している部分の骨がよく動く部分は停止点です。
起始点と停止点の種類
筋肉の「起こるところ」と「着くところ」にはいくつか種類がありますが、わかりやすい例として腕の筋肉で紹介します。
画像のイラストは腕の筋肉ですが、上腕二頭筋と上腕三頭筋にはそれぞれ別の付き方をしています。
左の上腕二頭筋の付き方は上部の2つの腱から起こっていますが、下部では中間の腱にでつながるように着いています。
逆に右の上腕三頭筋はひとつの大きな腱に対して着いています。
隠れて見えませんが、上腕三頭筋の起始点も2つの腱にわかれています。
このように筋肉の起こるところと着くところは、筋肉によって様々な形状で付着しています。
ポイント
- 起こるところ(起始点)と着くところ(停止点)は筋肉によって付き方が違う
- 上腕二頭筋の場合▶︎2つの腱から起こり、中間腱でつながる
- 上腕三頭筋の場合▶︎2つの腱から起こり、ひとつの腱に着いている
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上腕筋の例
筋肉の起こるところと着くところについて上腕筋を例に紹介します。
上の画像では赤い部分が筋肉の起こる所(起始点)で、オレンジの部分が筋肉の着くところ(停止点)で表現しています。
上腕筋の起始点と停止点について実際に筋肉が付着した状態が上記のようになります。
肘関節をまたがるようにして上腕筋の端っこの腱が停止点として尺骨に付着しているのがわかるかと思います。
筋肉の起こるところと着くところを知ることで、どの部分からどの部分まで筋肉が付いているのかを把握しやすくなります。
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上腕二頭筋の例
画像は上腕二頭筋の例です。
それぞれの起始点は
- 上腕二頭筋の長頭▶︎肩甲骨関節上結節
- 上腕二頭筋の短頭▶︎烏口突起
といったように分かれています。
また停止点は肘関節をまたぎ、橈骨の近位端(近位端)から2cm程度の場所にある橈骨粗面(とうこつそめん)という部分にあります。
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また側面から見るとこのようになっています。
上腕二頭筋はそれぞれふたつの長頭と短頭が起始点となって骨に付着しています。
二の腕に付いているイメージが強い上腕二頭筋ですが、起始点と停止点で考えると肩の骨と上腕の骨に付着している筋肉なんですね。
まとめ
今回は筋肉の「起こるところ=起始点」と「着くところ=停止点」について紹介しました。
筋肉には付き方があるということを知ってから学ぶことでより美術解剖学が理解しやすいようになります。
なんとなくそれぞれの筋肉の名前と形だけで覚えるよりも記憶しやすいので、
筋肉自体を学ぶ前に起始点と停止点について先に覚えてしまう方が後々楽です。
記事のまとめ
- 筋肉の起こるところ=起始点
- 筋肉の着くところ=停止点
- 起始点と停止点は筋肉によって付き方が違う
- 上腕二頭筋の場合▶︎2つの腱から起こり、中間腱でつながる
- 上腕三頭筋の場合▶︎2つの腱から起こり、ひとつの腱に着いている
- 起こるところと着くところを知るほうが筋肉について理解しやすい
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