キャラクターイラストを描く場合だけではなく、3DCGでのキャラクターモデリングなどをする際に前提となる知識で多くあげられるもののひとつが
「美術解剖学」ではないでしょうか。
特にある程度絵を描いたりしている方のなかでは美術解剖学の知識が必須だというのは一般常識だったりしますよね。
このブログでは以前に解剖学の中でも文字通り骨子になる人間の骨格についての記事をいくつか書いていましたが、今回からいくつかの記事に分けて人間の筋肉についても解説していこうと思います。
キャラクターのイラストを描きたい方やキャラクターモデリングなどしたい方はもちろん、リガーなどを目指している人にも役に立つ知識だと思いますので参考になれば幸いです。
【解剖学】筋肉の基本の形状と構造について【イラスト】
そもそも「美術解剖学」とはなんでしょうか。
美術解剖学とは
美術解剖学(びじゅつかいぼうがく,英Anatomy for Artists、Artistic Anatomy)とは、主に人体を中心とした、生物の解剖学的な構造を美術制作(主に具象芸術)に応用するための知識体系。
Wikipediaには上記のように端的に紹介されています。
解剖学に関して有名なのが大量の手記を残したレオナルド・ダ・ヴィンチですが、彼は芸術家でもあったため美術の表現のために解剖学を勉強していたようです。(当時は解剖学という学問は無く、美術的表現のために自ら人体の解剖をして学んでいたようですが)
実際に人体を解剖して構造を理解することによって芸術作品にその知識を活かすことができた為、芸術家達が人体の解剖を行ったことが起源とされています。
現代でも美術解剖学の知識は意外と様々な場所で役に立つことがあります。
- キャラクターのイラスト制作
- キャラクターモデリング制作
- デッサン
- スケッチ
- クロッキー
- デザイン
- 筋トレ
- マッサージ
- ストレッチ
- 医療関係など
このように創作活動から実生活にわたって人体の知識を知ることが必要不可欠な分野が様々あります。
特に人体の形状などに関わる難しいことをしようとすればするほど解剖学の知識は必須となるので、デザイン系だけではなく医療系のプロを目指す場合も避けては通れない道なのです。
デザイナーやイラストレーター、アニメーターやCGデザイナーの方でも解剖学を勉強している方は非常に多いですし、海外の美術系大学などではカリキュラムに美術解剖学が含まれているという話もよく聞きます。
つまりそれだけ重要な知識だということですね。
当サイトでも解剖学の記事を記事をいくつか書いているのは、地味でも必要になる知識だからでもあります。
(実際は自分の復習のために書いているだけですが)
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筋肉とは
筋肉は体を動かす際に使われる人体のパーツで、神経からの信号を受けて収縮(伸び縮み)することで、様々な動かし方ができます。
また筋肉は体を動かす際に必要なだけではなく身体全体を形づくっているものでもあります。
人間の体の核になる部分が骨格で全体の形状を生成したり動かしているのが筋肉ということですね。
筋肉の付き方だけではなく性別や骨格の形状によって人の体の形に個性がでます。
人間の体には約200から250種類の筋肉があり、体積の36%から45%を占めているようです。
拮抗筋とは
また筋肉は骨と同じように対になっていることが多いです。
例えば肘や膝を曲げる筋肉があるとすると反対に伸ばす筋肉もあります。
これを「拮抗筋」と言い、それぞれ反対の方向に力を動かすために必要な筋肉が対で存在しているということですね。
拮抗筋(きっこうきん)とは、筋肉運動の際に反対の動きをする筋肉のことである。アンタゴニスト(英: antagonist)と呼ばれる。
筋肉には様々な役割がある
また筋肉には体を動かす以外にも様々な役割があります。
大小様々な筋肉があり、パッと見でわかりやすい動きをする人体の表面に近い部分にある筋肉から、人体の内側にあり内臓などを支える筋肉などもあります。
手を握ったり開いたりするための筋肉もあれば呼吸をするための筋肉もあり、その全てに何かしらの役割があります。
例えば関節の位置と安定性を限定する筋肉もありますし、壁となって内臓を保護することもあります。
随意筋と不随意筋
筋肉には随意筋(ずいいきん)と不随意筋(ふずいいきん)があります。
随意筋とは
随意筋とは自分の意志で動かす(収縮させる)事ができる筋肉のことです。
一般的には手足などの骨格を動かすことができる筋肉のことで、顕微鏡で確認すると筋線維に対して横向きの模様(横縞)があることから横紋筋(おうもんきん)とも呼ばれています。
不随意筋とは
不随意筋(ふずいいきん)とは自分の意で動かすことの出来ない筋肉のことです。
随意筋とは対極をなす筋肉で内臓や血管の壁を作ったりしています。
またこの不随意筋は平滑筋(へいかつきん)とも呼ばれます。
自律神経によって支配されていて、随意筋に比べて運動の速度が遅い筋肉です。
筋線維とは
筋トレなどをしている方は聞く機会の多い「筋線維」について簡単に紹介しておきます。
筋線維(きんせんい)とは筋肉(随意筋)を構成している長くて糸のような線維状の細胞のことです。
一本ごとに運動神経と結合していて、筋原線維で束ねられています。
例えば上腕二頭筋などの筋肉もいくつかの繊維状の筋肉が束になってまとまって収縮したりします。
筋原線維にはアクチンとミオシンというタンパク質があり、それが筋線維を収縮させています。
筋肉の組織と構造
筋肉にはいくつかの組織があり、それが組み合わさって構成されています。
筋膜
筋肉は「筋膜(きんまく)」という白い目の粗いコラーゲン質の膜で包まれています。
いくつかの筋肉の集まりを共通の筋膜が包んでいる場合や、ひとつの筋肉をひとつの筋膜が包んでいる場合もあります。
この筋膜の外側ではそれぞれの筋肉の塊がよく滑り、ずれることができるようになっています。
層によって浅筋膜と深筋膜に分かれていて、機能などにより内臓筋膜と頭頂筋膜といったように分類されています。
筋膜は端にいくにつれ収束し腱へと変化していきます。
靭帯
靭帯は膠原線維(こうげんせんい)で出来ていて、骨と骨と繋ぐ役割を担っています。
腱
腱とは筋肉の端にある膠原線維の束のことで、片方が骨に付きもう片方が筋肉と繋がっています。
筋肉は収縮しますが、腱は収縮しないようになっています。
わかりやすい例としては握りこぶしを握った時に手首の内側に飛び出る部分が腱です。
また有名なのがかかとに繋がっているアキレス腱(踵骨腱)ですね。
筋肉の形状
人間の体には様々な筋肉がありますが、いくつかの形状で分類して見ることができます。
それぞれの基本の形状▶︎部位ごとに変化していくといった感じでイメージすると覚えやすくなります。
ここで紹介するのは代表的な以下の形状です。
- 平滑筋
- 革状
- 多腹筋
- 半羽状筋
- 羽状筋
- 多羽状筋
- 三角状
- 板状
- 紡錘状筋
- 二腹筋
- 三頭筋
- 螺旋の板状
- 螺旋ひも状
以下では実際に僕が資料からスケッチしたイラストを使って簡単に紹介していきます。
平滑筋と革状
まずいちばんシンプルな形状が不随意筋の項目でも出ていた「平滑筋」です。
その名の通り筋線維が平坦な筋肉で、内蔵や血管などの壁として機能する筋肉です。
また似た形状で「革状」のものもあります。
多腹筋と半羽状筋
次に「多腹筋(たふくきん)」です。
筋肉の途中に腱があり、分割されたような形状になっているのが特徴です。
また「半羽状筋(はんうじょうきん)」は片側に腱があり、筋肉の束(筋束)が斜めに走っているのが特徴です。
多羽状筋と三角状
「多羽状筋(たうじょうきん)」は羽状筋が集まって出来ている筋肉です。
まるで羽ペンの羽のような形状なのが特徴的です。
また三角状筋は腱に収束するように三角形をしている筋肉です。
わかりやすいが肩についている三角筋ですね。
三角筋は複数重なっていたりします。
板状筋と紡錘状筋
首から頭蓋骨に繋がっている部分にある「板状」の筋肉や、「紡錘状筋(ぼうすいじょうきん)」などもあります。
特に紡錘状をしている筋肉は沢山あるので、一番良く見る形状かもしれません。
片方に起始腱(筋肉が起こる部分)、もう片方に停止腱(筋肉が付く部分)があり腱を挟んで膨らんだような形をしています。
二腹筋と三頭筋
「二腹筋(にふくきん)」は紡錘状の筋肉が腱で繋がったような形状をした筋肉です。
また「三頭筋(さんとうきん)」は複数の紡錘状の筋肉がひとつの腱で収束したような形状をしています。
有名なのが二の腕部分にある上腕三頭筋などですね。
羽状筋と螺旋板状
半羽状筋の両側バージョンである「羽状筋(うじょうきん)」や板状の筋肉がひねられたような形状の「螺旋の板状」の筋肉もあります。
螺旋のひも状
また関節などを包むように複雑な形状をしている「螺旋のひも状」の筋肉もあります。
扇の要状につく筋肉
また扇子などの要(開く時に動かす蝶番の部分)のように重なって骨に付く筋肉もあります。
形状を把握しにくい筋肉ですが、いずれ他の記事でも紹介するかもしれません。
紡錘状筋の部位名称
基本的な紡錘状の筋肉の名称についても触れておきます。
この形状の筋肉は上下を腱で挟まれたようになっていますが、それぞれに以下の名称があります。
- 筋頭(きんとう)
- 筋腹(きんぷく)
- 筋尾(きんび)
まとめ
今回は解剖学で筋肉を勉強する際に必要な前提知識と、筋肉のそれぞれの形状について紹介しました。
もちろんこの記事で紹介したものの他にも多種多様な形状の筋肉がありますが、この基本の形状から変化したような筋肉が沢山あるのでここで紹介した筋肉に関する知識を知っておくことで、より解剖学に関する理解がしやすくなるかと思います。
記事のまとめ
- 美術解剖学は人体の構造を理解するために有効な学問
- 筋肉は神経からの信号で伸縮する
- 筋肉には様々な役割がある
- 拮抗する役割の筋肉がある
- 随意筋(ずいいきん)と不随意筋(ふずいいきん)が存在する
- 筋肉を構成する組織に「筋膜」「腱」「靭帯」がある
- 筋肉には基本的な構造がある